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活動レポート

マラリアについて学ぼう②WHOマラリアレポート2014ファクトシート

WMR-2014-2480x3508pix.jpg2014年12月9日、世界保健機関(WHO)から「世界マラリアレポート2014(World Malaria Report 2014)」が発表されました。レポートでは、2014年に、97か国・地域でマラリア感染が報告された。年間マラリア感染の危険にある人は約32億人、その内12億人が特に感染の危険が高い。感染の危険が高い地域では、人口1000人当たり1人以上がマラリアを発症していると報告されています。

マラリアレポートよりファクトシート

2013年の疾病の疾病負荷(経済的コスト、死亡率、疾病率で計算される特定の健康問題の指標)

2013年に世界で発生したマラリアは1億9800万件に上ると推測されており(1億2400万~2億8300万人の範囲内と推測)、そのうち58万4000人(36万7000~75万5000人の範疇)と推測される。マラリアによる死亡件数の90%はアフリカで発生している。

2013年にはアフリカでは43万7000人の5歳未満の子どもが、マラリアが原因で亡くなった。世界的に、マラリアによって亡くなった5歳未満の子どもは合計45万3000人に上る。

2000年から2013年にかけて、マラリア拡大に対する介入は、世界的には30%、アフリカだけ見ると34%、マラリアの発生率を減少させている。同時期、マラリア死亡率は、世界的には推定47%減少しており、アフリカ地域だけでは54%減少している。5歳未満の年齢層では、世界的には53%、アフリカでは58%死亡率が減少した。

(症候性感染もしくは無症候の感染を含めた)マラリア原虫感染の有病率が2000年以降アフリカで劇的に減少しているという新たな分析結果が出されている。2000年の1億7300万人の患者数が2000年には1億2800万人にまで減少した。この事は、マラリア感染地域に暮らすアフリカ人口が43%増加しているにも関わらず、患者数が26%減少したことを示している。

マラリア介入の規模拡大に関する動向

過去10年にわたり、ベクターコントロール(媒介生物駆除)介入の範囲は大幅に拡大している。2013年には、アフリカでマラリア感染の危機にあるほぼ半数(49%)が殺虫剤処理済蚊帳 (insecticide-treated nets: ITNs)を保有している(2004年は3%にすぎない)。

2014年には、約2億1400万張もの長期残効型殺虫剤処理済蚊帳 (long lasting insecticide-treated nets: LLIN)がアフリカのマラリアが発生する国で配布される予定である。同地区へ配布されるLLINs総数は2012年以降合計で4億2700万張に上った。

2013年には、室内噴霧殺虫剤(IRS:Indoor residual spraying)が行われた対象は、世界全体で1億2300万人にのぼる。アフリカではマラリア感染の危険にある人口の7%に該当する5500万人を対象に定期的に室内噴霧殺虫剤が行われている。

マラリア迅速診断試験法(Rapid Diagnostic Test:RDT)とアルテミシニン誘導体多剤併用療法(Artemisinin-based Combination Therapy:ACT)へのアクセスは世界各地で拡大傾向にある。

  • マラリア常在国の公共・民間部門へのRDTの売上は2008年の4600万個から2013年の3億1900万個に増加している。
  • 顕微鏡検査によって検査を受けた患者数は2013年には1億9700万人に増加したが、これにはインドにおける血液塗沫法(スライドで赤血球中のマラリア原虫を直接顕微鏡で検出)による1億2000万人を含んでいる。
  • 世界的には、2013年にはマラリア常在国でアルテミシニン誘導体多剤併用療法がおこなわれたのは3億9200万件に上る(2005年は1100万件)。

2013年には初めて、アフリカにおける公共部門で実施された(RDTと顕微鏡検査の混合による)診断検査の件数は、ACTが配布された数を超えた。この事は、マラリアであると推定して治療するのではない治療を可能にしたことを意味する。

アフリカでは、マラリアの間欠予防治療(Intermittent Preventive Treatment for pregnant women:IPT)を受けている女性の割合は増加傾向にあるが、その数は国家目標よりは少ない。2013年には3500万人の妊婦の内約1500万人が間欠予防治療の一回の服用を受けていなかった。

子どもへの予防治療を受け入れ、拡大させる試みは緩慢である。2013年現在、WHOが5歳未満の子どもに対する予防治療を推奨した16か国のうち、国家政策として治療方法を採用したのはわずか6か国だった。そのうち乳児に対して推奨された予防治療を採用したのは1か国にすぎない。しかしプログラムの実施は始まったばかりである。

薬と防遏作業


抗マラリア薬に耐性を持つ寄生虫と殺虫剤耐性を持つ蚊の出現は、世界的なマラリア死亡を増大させる恐れがある。

近年では、アルテミシン体制を持つ寄生虫がメコン川流域に位置するカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの5か国で発見されている。カンボジアとタイの国境付近では、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)は抗マラリア薬に最も強い耐性を示しており、多剤耐性(multidrug resistance:MDR)は大きな問題となっている。

2010年から2013年にかけて、世界的に49か国が少なくとも一つの薬剤への耐性を持つ蚊の存在が報告されている。もちろんのこと、39か国が2剤かそれ以上の殺虫剤への耐性が報告される。もっとも広く報告されているのはマラリア・ベクターコントロールで最も使用されている殺虫剤であるプレスロイドに対する耐性の事例である。

世界的目標に向けた進捗


2015年までにマラリア発生件数を半減するという国連ミレニアム開発目標(MDGs)のゴール6は既に到達している。

国別進捗状況を見ると、合計64か国が2015年までにマラリア発生件数を半減させる方向へ到達できる見込みである。そのうち55か国は、世界保健総会(WHO加盟国で構成される最高意思決定機関で毎年1回開催)とロールバック・マラリア・パートナーシップ(マラリアとの闘いをグロバールに対応していくために、WHO、ユニセフ、国連開発計画、世界銀行によって設立された国際機関)が定める2015年までにマラリア発生件数を75%減少させる目的に到達する見込みである。

資金は今なお不十分

2013年のマラリア予防対策と制圧のための国際的・各国の資金拠出は合計27億ドルだった。2005年以来支出金額は3倍となっているが、マラリア予防対策と制圧のために必要とされる世界的な目標金額である51億ドルには不十分である。

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